日本美容皮膚科学会 市民公開講座「コスメも機能を持つ新時代へ」開催レポート!

日本美容皮膚科学会 市民公開講座「コスメも機能を持つ新時代へ」開催レポート!

2023年8月18日に、第41回日本美容皮膚科学会総会・学術大会にて、ロート製薬との共催セミナー 「市民公開講座:コスメも機能を持つ新時代へ」が開催され、総勢180名もの方々にご参加いただきました。
3名の著名な先生方のお話が直接聞ける機会はめったになく、非常に貴重なイベントでした。

今回は、そのセミナー内容をレポートいたします!

<<お話いただいた先生方>>

川島 眞(かわしま まこと)
東京女子医科大学 名誉教授

1978 年 東京大学医学部卒業
1978 年 東京大学皮膚科 助手
1984 年 パリ市パスツール研究所 乳頭腫ウイルス部留学
1986 年 東京大学皮膚科 講師
1988 年 東京女子医科大学皮膚科 助教授
1992 年 東京女子医科大学皮膚科 主任教授
2018 年 東京女子医科大学 名誉教授
     現在に至る

川島 眞(かわしま まこと) 東京女子医科大学 名誉教授
尾見 徳弥(おみ とくや)
クイーンズスクエア メディカルセンター皮膚科 部長

1992年 日本医科大学大学院医学研究科内科系皮膚科学(現 皮膚粘膜病態学)専攻 単位取得
1997年 クイーンズスクエアメディカルセンター 皮膚科部長
2010年 日本医科大学連携教授(併任)
2012年 日本医科大学客員教授(併任)
2012年 東京医科大学兼任教授(併任)
日本美容皮膚科学会 理事・総務委員長
日本美容医療協会 理事
     現在に至る

尾見 徳弥(おみ とくや) クイーンズスクエア メディカルセンター皮膚科 部長
小林 美和(こばやし みわ)
こばやし皮膚科クリニック 副院長

1996 年 香川医科大学卒業
産業医科大学皮膚科入局
1998 年 産業医科大学皮膚科 専修医
2001 年 産業医科大学皮膚科 助手
2004 年 医学博士
2005 年 産業医科大学皮膚科 講師
2014 年 こばやし皮膚科クリニック勤務 副院長
     現在に至る

小林 美和(こばやし みわ) こばやし皮膚科クリニック 副院長

コスメシューティカルとは~オンライン販売の現状と課題~

コスメシューティカルとは~オンライン販売の現状と課題~

「コスメシューティカル」とは、「cosmetic(化粧品)」と「pharmaceutical(医薬品)」を組み合わせた造語で、「機能性を持つ化粧品(=機能性化粧品)」という意味をもちます。具体的な成分としては、ハイドロキノン・レチノール・レチノイン酸・アゼライン酸など。このような機能性化粧品は、機能があるがゆえに使い方を誤ると副作用が起こる可能性があり、そのトラブルを防ぐためにこれまでは医師の管理の下で販売されていました。ところが昨今、このような機能性化粧品もオンラインで手軽に購入できるように。だからこそ今、消費者側も化粧品について成分、効果、安全性、使用法についての正しい知識と理解、すなわちコスメティックリテラシーを高めることが必要であると教えていただきました。

― 医師の管理下以外での購入の問題点とは?

医師の管理なく購入する場合、以下3つの点が特に重要になってくるとのことです。

① 正しい使い方をしっかりとレクチャーされているか?
② 肌トラブルが起きた時のフォローが適切に行われているか?
③ 適切に品質管理がされているか?

近年は、消費者同士で開封済みの商品を譲ったり、ネット販売されたりするケースもあるそうですが、大変不衛生であり品質にも不安が生じてしまいます。

 医師の管理下以外での購入の問題点とは?

― 販売元と消費者に求めること

販売元に求められるのは、医師による指導と同様のサービスで提供されることが望ましく、 また、手軽に購入できるようになった時代だからこそ、使う側の責任も求められています。コスメに関する知識を高め、正しい使い方を身につけるなど、コスメティックリテラシーを向上させ、賢く美肌を目指すことが必要であると教えていただきました。

機能性成分(ハイドロキノン、アゼライン酸)の正しい理解と使い方

続いて小林先生から、実際のコスメシューティカル(機能性化粧品)に含まれている代表的な成分「ハイドロキノン」と「アゼライン酸」について、成分の特徴や注意点、クリニックでの使用例などを解説いただきました。

機能性成分(ハイドロキノン、アゼライン酸)の正しい理解と使い方

<ハイドロキノン> ― 規制が緩いからこそ、消費者が賢くならなくてはいけない!

日本では2001年の規制緩和によりハイドロキノンが化粧品成分として使用可能になったのに対し、実はEUでは反対に化粧品原料として使用禁止に、アメリカでは配合濃度に規制があるなど厳しい管理下で使用されています。なぜなら、ハイドロキノンは機能がある分、肌トラブルも通常の化粧品成分より多いから。日本は諸外国と比べて規制が緩いからこそ、使う側の消費者が賢くなる必要性を求められています。

<ハイドロキノン> ― 規制が緩いからこそ、消費者が賢くならなくてはいけない!

他にも小林先生からは、ハイドロキノンの効果や注意点・使い方まで、専門的な指導をいただきました。

  • ハイドロキノンが効くタイプのシミと、効かないタイプのシミがある
  • ハイドロキノンの使用に注意が必要な人は?


  • 使用前には、ユーステストを行うこと
  • 多量使用による副作用を防ぐため、インターバル(お休み)期間を設けること
  • ハイドロキノン使用時は、UVケアが必須であること
  • <アゼライン酸> ― ニキビ治療でアゼライン酸を勧めるケース

    アゼライン酸は日本皮膚科学会の尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023でもニキビ治療に推奨されている成分であり、実際の診療では以下のようなケースで治療に用いています。

  • 面皰(めんぽう)治療薬が使えなかった人への代替案として
  • 妊娠中、授乳中で面皰治療薬を休んでいる間の代替案として
  • 治療に追加して、もう一押ししたい場合
  • より積極的なスキンケアを希望する人に
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    <アゼライン酸> ― ニキビ治療でアゼライン酸を勧めるケース

    また、アゼライン酸はニキビだけでなく、酒さにも効果的です。中でも、ニキビのようなポツポツとした丘疹を伴うタイプの酒さ(丘疹膿疱型酒さ(きゅうしんのうほうがたしゅさ))には有効で、治療ガイドラインでも推奨されています。

    安全性の高い成分ですが、一方で「熱感」や「かゆみ」などの刺激も出やすい成分です。
    一般的な化粧品のつもりで使うと、刺激に驚かれるかもしれません。
    やはり事前問診やユーステストを行うこと、また、保湿機能の高い製剤を併用することを指導いただきました。

    パネルディスカッション

    最後は、座長の尾見先生、川島先生、小林先生によるパネルディスカッションが行われました。

    パネルディスカッション

    ― どのシミなら皮膚科受診すべきレベルなのか?

    話題になったのは「シミの相談くらいで皮膚科を受診してもいいの?」という疑問。
    このように皮膚科の受診を躊躇されている方も多いかと思いますが、先生方曰く、シミ治療の最も大切なことはシミの見極め、つまり診断であるとのこと。
    シミの種類に合わせた治療法選択が重要であり、また、時にはシミが皮膚がんの可能性もあるため、一旦は皮膚科専門医を受診して相談することを基本と考えるのが良いそうです。

    また、参加者からの質問にも先生方にお答えいただき、大いに盛り上がりました。

    参加者からの質問にも先生方にお答えいただき、大いに盛り上がりました。

    今後、コスメシューティカル(機能性化粧品)をセルフで手軽に購入できる機会はますます増えてきます。そのため、製造・販売するメーカーが責任を持つのはもちろんですが、使う側も正しい情報を持って化粧品を選び使えるようになること、つまりコスメティックリテラシーを向上させることが重要です。

    私たちロート製薬はそのお手伝いができるよう、今後もこのようなセミナーの開催や正しい情報提供を行ってまいります。